【1】香港に行きたい!!
かつてPS(プレイステーション)の発売とともに売り出されたという、まあ20年近く昔のゲームである。
ストーリーを説明するのは非常に難しいのだが、私がそのゲームを気に入った理由はプレーヤーが1990年代の香港、しかも九龍城の中を自由に歩き回れるというところだった。
夜が明けない世界。
暗い空を覆う雲に毒々しいネオンが反射する。
少し目線を下げると、ひしめき合って立つ高層建築に所狭しと取り付けられた怪しい原色の看板。鉄の柵は赤茶色に錆び、床のタイルは黄ばんでひび割れ、壁には何重にも張って剥がしたポスターの跡が残っている。
空気がしっとりと淀んでゆくの感じながら建築群の中へ…
肩で壁を擦りながら暗い路地を進んでゆく。
コツン……コツン……
底の見えない闇に吸い込まれてゆく自分の靴音に交じり、天井から垂れた配線がパチパチと火花を散らしている。
足元の水たまりに注意しながら壊れたまま投げ出されている鉄の看板を跨ぐと…ここは歯医者だろうか、黒ずんで埃の積もったガラスケースの中にはずらりと入れ歯が並べられている。
店先から目線を戻すと、こちらはどこかの飲食店の換気口なのだろうか、壁にあいた穴からシューシューと蒸気が噴き出してきた。
とまあこんな世界なのである。
舞台のモデルはかつて香港に存在した九龍城砦。香港返還前に取り壊されてしまい、現在は全く面影のない公園になっている、らしい。
この場所に行ってみたい…実際にはどんな感じだったのか、もっと見てみたい…
胸をときめかせながらネットで当時の画像を検索しているうち、九龍城砦ではないもののあの空気感を最も残している場所、「チョンキンマンション」なる建物で撮影された香港映画があることを知った。(私は邦画はおろか洋画も歴史に残る名作も、そもそも映画というものに興味がない人間なので、香港映画なんて猶更知っているわけがなかった)
恋なんて甘ったるい言葉が入ったタイトルには正直あまり食指が動かされなかったのだが(映画の中でも特に恋愛ものは好きじゃない)、まあ背景を楽しむということでちょっと我慢して見てみるか…
早速中古のDVDを取り寄せ、あたたかいミルクティーを用意してからディスクを再生したのはある休日の深夜のことだった。
「恋する惑星」は、私のようなものを知らない人間でなければ誰でも耳にしたことがある超名作。らしいので、ここであらすじを説明する必要はないかもしれない。
それは1990年代の香港を舞台に、とある二組の男と女の恋模様を綴ったオムニバス映画である。
一番簡潔に説明すると、まさに私のような恋愛映画を敬遠する人間にとっては全く興味をそそられない、陳腐でありきたりな作品という印象を受ける。
私自身の言葉でその魅力を説明し直そう
1990年代香港、そこは混沌の街。
英国と中国の隙間に流れ込んだ人々は、己が生きるすべを求め、身を寄せ合って夜を明かす。
鮮やかなネオンの波を見下ろす狭い部屋に、孤独な男がいた。
馴染みのコンビニ店員はそっけない。サラダ屋の親父に紹介される娘はどうにもしっくりこない。
乾いた孤独を癒やす為、男は夜の街を彷徨う。
賑やかな街の奥底に、孤独な女がいた。
生きるために危険な運び屋の仕事を進める。
手下の男たちの尻を叩き、混沌の中を駆け回り、だが女の心は孤独だった。
雨の晩、軒先から滴る水滴を避け、バーに逃げ込んだ男と女はすれ違う。
あたたかな光を反射して煌めくグラス。
外界の闇から切り離され、穏やかな音楽の流れる空間。
暗い混沌の街の小さな隙間で、二人は出会った。
映画の再生が終わったのは午前二時を回っていたのだが、私はその余韻から抜け出すことができずに結局空が白んでくるまで物思いにふけっていた。
なんと美しい映画なんだろう。
雨粒に反射して輝く夜の街、、ビルの直ぐ真上を掠めてゆくジェット機、、聞き慣れない言葉が行き交う雑踏…
よく小説なんかで「(作品に)衝撃を受けた」「人生が変わった瞬間だった」なんて表現を見ると(そんなことあるわけないだろう、大げさだなぁ)と笑っていたのだけども、間違いなくあの一時間半は私の人生を変えたと思う。
いや、人生は変わっていなかったとしても、映画嫌いな私が初めて手元に置いて何度も見返したいと思えた「大切な宝物」になったのは確かである。
さて、それじゃあやることは一つ。香港に行きたい!!!
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皆さまはじめまして。
五条もう と申します。
このブログは私が広東語や中国語(普通話)を学習している記録、勉強法や、その他香港・台湾・中国についての話題をつらつらと書いていく予定です。
はじめに広東語や中国語(普通話)を勉強しようと決意した時、国の事情や文化が言語に及ぼす影響、学習環境が今まで義務教育で習ってきたような英語とは全く違うことに戸惑いました。
疑問が浮かんでも質問できるような人はなかなか周りにいないし…
それからググってみたり、体当たりしてみて分かったことがたくさんあります。
私もまだまだ初心者ではありますが、同じように広東語・中国語(普通話)を勉強しようと思っている初心者の方々、あるいは先輩方と情報交換できる場が増えればと思い、こうしてネット上に記録を残すことにしました。
どうぞのんびり読んでみてください。
はじめての方も気軽にコメントしてみてください。
よろしくお願いします^^
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